現在、様々なダイエット法が世の中に出回っていますが、その中には科学的根拠を持たないダイエット法と、科学的根拠に基づくダイエット法があります。
ダイエットを始めようとしている人にとっては、どのダイエット法を選ぶのかというのは非常に重要ですが、このような状況のためにどれが正しいのか分からないという方も多いかと思います。
そこで今回は、「Scientific evidence of diets for weight loss: Different macronutrient composition, intermittent fasting, and popular diets(減量のための食事についての科学的エビデンス:異なるマクロ栄養素の組み合わせ、断続的断食と有名な食事法)」というレビュー論文を参考にしつつ、どのダイエットが科学的に実証されているかについてご紹介していきます。
この記事がおすすめな人
・代表的なダイエット法の概観を確認したい
・特定のダイエット法について簡単に知りたい
特定の栄養素を取るダイエット法
高タンパク低炭水化物ダイエット
まず、特定の栄養素を取るダイエット法について解説していきます。
特定の栄養素を取るダイエット法の中でも有名なのが、炭水化物を少なくする代わりにタンパク質を多くするといった高タンパク低炭水化物ダイエットです。
それについては以下のように述べられています。
結論として、短期間においては、高タンパク低炭水化物ダイエットは体重減少に効果的だろう。しかし、代謝や腸内環境への影響を考慮するならば、このダイエット法は人生を通して続けるようなものではなく、体重減少を活性化させるためのツールとして捉えられるべきだ。
(In conclusion, in the short term, HP-LCDs are suggested to present benefits for weight-loss. However, owing to their major effects on metabolism and gut health, they should be considered as a jump-start weight loss tool rather than a diet for life.)
Science Direct ”Scientific evidence of diets for weight loss: Different macronutrient composition, intermittent fasting, and popular diets”(筆者訳)
つまり、高タンパク低炭水化物ダイエットが効果的なのは間違いないですが、それを続けるとなると一定のリスクがあるかもしれないということです。
炭水化物を減らすメリットとしては、インスリンの分泌が抑制され、グルカゴンというホルモンが増加することが挙げられます。このグルカゴンの増加によって、体脂肪がエネルギーとして使われるようになるため、痩せやすくなるというわけです。
デメリットとしては、この論文においては、低炭水化物ダイエットや高炭水化物ダイエットを長期間続けると死亡率が増加することが指摘されています。
要するに、炭水化物を抜きすぎるのもダメだし、炭水化物を取り過ぎるのもダメだということです。
適正な炭水化物量については、炭水化物から得られるエネルギーが全体の50~55%のときに死亡リスクが最も低いと言われているため、急激な体重減少を求めないのであれば、適度に炭水化物を摂取することをおすすめします。
ケトジェニックダイエット
ケトジェニックダイエットとは、炭水化物を減らし、脂肪を多めにとることで脂質をエネルギーとする食事法です。
それについては、次のように述べられています。
概して、臨床試験ではケトジェニックダイエットによって各人の体重が飛躍的に減少したことが報告されている。〔…〕悪影響としては、便秘、頭痛、口臭、筋痙攣、脱力感などが一般的に確認されている。
(Overall, clinical trials have reported significant weight reduction for individuals on the KD,〔…〕Adverse effects such as constipation, halitosis, headaches, muscle cramps, and weakness were commonly observed.)
同上(筆者訳)
これも高タンパク低炭水化物ダイエットと同様に効果的なダイエット法ですが、便秘、頭痛、口臭、筋痙攣、脱力感といった悪影響も報告されているため、慎重に行う必要があると考えられます。
特定の食べ物を避けるダイエット法
ベジタリアンダイエット
もちろん、ベジタリアンダイエットも信頼性の高い論文(メタアナリシス)によって体重減少の効果が実証されています。
また、ベジタリアンダイエットに関しては健康上のメリットも多く報告されています。
ベジタリアンダイエットは高まりを見せつつある。なぜなら、通常の食事と比較した際に、いくつかの健康的に良い影響があることが実証されたからだ。ベジタリアンダイエットは、心血管疾患や高血圧、2型糖尿病、癌などの慢性病を予防する効果がある。
(Adoption of plant-based diets is growing because evidence has shown some health benefits when compared with omnivorous diets. They can protect against chronic diseases, such as CVDs, hypertension and type 2 diabetes, and some cancers.)
同上(筆者訳)
ベジタリアンダイエットは、痩せることができる上に、生活習慣病など病気を予防することもできるのでかなりおすすめなダイエット法だと言えます。
ただし、長期間の影響を調査した論文は少ないため、ベジタリアンダイエットを続ける場合は自分の体と相談しながらの方が良さそうです。
パレオダイエット
パレオダイエットとは、旧石器時代食とも呼ばれ、その時代の食事を参考にしたダイエット法のことです。
パレオダイエットは旧石器時代の食事に立ち返ることを念頭に置き、農耕や牧畜に頼らず、日常的に簡単に入手できる魚介類、鳥類、小動物、昆虫、卵、野菜、キノコなどの菌類、根菜、ナッツ類などを中心とする。旧石器時代には、自然界から容易に入手できなかった穀物、豆類、乳製品、芋類、食塩、砂糖、加工油は原則的には避ける。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
つまり、旧石器時代には生活習慣病はなかったのだから、旧石器時代と同じ食事をすることで生活習慣病を予防し、痩せることもできるというダイエット方法になります。
このダイエット法においても、痩せる効果は実証されています。
〔…〕エビデンスはパレオダイエットの健康上のメリットと体重減少の効果を支持しているものの、パレオダイエットの健康への影響についてはさらなる研究が必要である。
(〔…) although evidence suggests general health benefits and weight loss, further research is needed to support the popular claims of the Paleo diet.)
Science Direct ”Scientific evidence of diets for weight loss: Different macronutrient composition, intermittent fasting, and popular diets”(筆者訳)
また、健康への影響に関しては、さらなる研究が必要なようです。
現時点では、メタボリックシンドロームの改善、インスリン感受性の増加、心血管疾患リスクの減少、満腹感の増加、腸内細菌叢の好ましい変化などが健康上のメリットとして挙げられています。
ただし、ビタミンD、カルシウム、ヨウ素などの栄養素が摂取できない可能性があるとの指摘もあります。
ですので、パレオダイエットを実践する際は、足りない栄養素を補うような食事をする、あるいはサプリメントで栄養素を補うと良いでしょう。
グルテンフリーダイエット
グルテンフリーダイエットは、テニス選手のジョコビッチ選手が実践している食事法として有名です。
その内容としては、グルテンを一切摂取しないといったもので、主に小麦粉や大麦などを避ける食事法です。
ですが、この食事法で痩せると言えるような、十分な科学的根拠はありません。
人間を対象としたコントロール化された臨床研究によって、グルテンと体重減少の関係は調査されたことがない。
(To our knowledge, no controlled clinical study in humans has investigated the association between gluten and weight loss. )
同上(筆者訳)
食事の時間をコントロールするダイエット法
断続的断食(ファスティング)
断続的断食(ファスティング)にも種類がありますが、有名なもので言えば、睡眠時間を含めた16時間の間に何も食べないといった16時間断食があります。
このような断食では、ケトジェニックダイエットと同様に、脂肪をエネルギー源にシフトする効果があります。
12時間から24時間の断食は、20%以上の血清グルコースの減少と肝グリコーゲンの枯渇を引き起こす。そのような状況下で、体はケトン代謝モードに移行し、肝グリコーゲン由来ではない、ケトン体や遊離脂肪酸をエネルギー源とするようになる。
(In humans, 12 to 24 h of fasting typically results in a ≥20% significant decrease in serum glucose and depletion of the hepatic glycogen. Under these circumstances, the body switches to a ketogenic metabolic mode using non-hepatic glucose, fat-derived ketone bodies, and free fatty acids as energy sources.)
同上(筆者訳)
そのため、脂肪をエネルギー源として燃焼させることができるということです。
健康的な成人がこのダイエット法を行うのは安全と言ってよいでしょうが、ケトジェニックダイエットと同じようなデメリットを引き起こす可能性や、断食のあとの食べ過ぎに繋がる可能性が考えられます。
まとめ
今回の記事では、高タンパク低炭水化物ダイエット、ケトジェニックダイエット、ベジタリアンダイエット、パレオダイエット、グルテンフリーダイエット、ファスティングについてご紹介しました。
炭水化物を抜くダイエット法は短期間で痩せたい人におすすめですが、長期間行うと体に不具合が出る可能性があるので注意しましょう。
また、健康的に痩せたい人には、ベジタリアンダイエット、パレオダイエット、ファスティングなどがおすすめです。
参考になれば幸いです。
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